新劇場版ヱヴァンゲリヲン序の感想 vol.2

 映画「新劇場版ヱヴァンゲリヲン:序」概要や思ったこと感じたことを率直に書いていきたいと思います。第2回はシンジの家出からヤシマ作戦までです。以下ネタバレになりますので、まだ映画を見ていない方は読まないように気をつけてください。


シンジの家出放浪シーンは大幅に変更

 トウジがいきなりシンジを殴りつける。なんかトウジの声がちょっと違う。声変わりしたのかな。連れションシーンでのケンスケのセリフ「この時を逃しては!或いは永久に!」は、テレビ版よりも若干声が抑えられてた。テレビ版ではこのセリフ、いきなり声が変わって誰が喋ってるのか分からない感じだったからかな。

 シンジ放浪シーン。ケンスケとは会わずに、夜、道路が途中で途切れているところで、「もうイイです!ミサトさんの所に戻してください!」といきなり訳の分からない独り言を叫んだかと思えば、後ろでライトが次々とついて、ネルフ諜報部の面々がお目見え。風景が赤く染まってシンジが精神的に追いつめられていくテレビ版での卓越した心理描写は全てカット。代わりに新しい細密な風景シーンが挿入されている。

 家出から帰った後にミサトがシンジを叱責した後、自分で自分をぶつシーンがあった?ウ〜ン、この点はちょっと隙があるようにも思える。テレビ版はキャラのセリフや行動も自然で隙がなかったけど、新劇場版では、新しくしようという試みが逆に裏目に出て隙が出来てしまった箇所も幾つかあるように思える。セリフもちょこちょこと変更されているし、既に完成されている作品を無駄に弄ってるような気がしないでもない。

 第5使徒シャムシエルとの戦闘中に、二人を中に入れる。その時出てくる二人の学ラン姿の上半身ID写真がなんか新鮮だった。改心したトウジがシンジにワイを殴れと頼むシーンは、学校の連絡通路。この通路どこかで見た覚えがある。シト新生だったかな。


新劇場版:序の最大の見所、ヤシマ作戦

 第6使徒ラミエル出現の報を受けて出撃直後に、ラミエルの過粒子砲に攻撃されるエヴァ初号機ですが、新劇場版ではなぜかすぐにエヴァ初号機を後退させなかった。この点不可解。ATフィールドはまだもっているとか言ってる場合じゃないでしょリツコさん、何ですぐに後退させないんだと訝しがってたら、その後、許可が下りて、エヴァを兵装ビルごと落下させました。スッゴイなぁ、かなりダイナミックな後退のさせ方。まさかこのシーンを見せるためにシンジ君を長時間犠牲に???

 ヤシマ作戦はかなりボリュームアップ。ヤシマ作戦の立案を練るシーンはテレビ版ではミサトと日向マコトだけだったけれど、新劇場版ではリツコ、伊吹マヤ、青葉シゲルの他に、いわゆる名のないネルフスタッフも登場。スタッフの机の取り囲み方が、旧海軍の作戦室みたいで興奮した。でも肝心のミサトの顔がスゴークヤル気なさげで対照的。これもまた面白い。

 作戦会議後のシーンでミサトとリツコが並んで歩いているシーン。二人の被っているヘルメットに作に○と、技に○のマーク。こういう細かいこだわりがまた良い。ミサトが歩いているときの腕の振りの動きは、旧劇場版で「ネルフの法的保護の破棄と指揮権の日本国政府への委譲A−17」が第二東京から発令されたときの、あの印象的で目を見張ったダイナミックな動きとソックリ。旧作から受け継がれている感がある。日本中の電力を集めるシーンでは、電力会社内のシステム画面も綺麗に表示されていた。後にエンドロールの協力スペースに「東京電力」が出てくるけど、実際に東電のシステムパネルを参考にしたということだろうか。とにかくヤシマ作戦のシーンは序の見所。

 税金の無駄遣い的兵器の使い方も豪勢。税金の無駄遣い云々については、冬月ではなくリツコのセリフに変更されている。それをミサトが皮肉と同情を込めてフォロー。最近現実世界でも年金資金や税金の使い道について問題になってるけど、ミサトの諦念の交じった皮肉は現実問題とリンクした。社会システムの複雑さを考えさせられて、一筋縄ではいかない。第4使徒だったか第5使徒ラミエルだったかを攻撃するときの、無数のロケットの弧の描き方を見て、「ふしぎの海のナディア」で孤立無援のノーチラス号が多数のガーフィッシュに対して放つ航空爆雷の名シーンと似てて、またも興奮。やっぱり爆破シーンは見所。

 戦自研のポジトロンライフルを運ぶシーンは、レイ登場の零号機が屋根を開けるシーンはカット。新劇場版ではかなり変わった形状のヘリコプターが輸送する。そういえばメカ関連もかなりデザインが斬新。まるで近未来的ハリウッド映画に出てくるデザインっぽい。徴収したポジトロンライフルを改造しているネルフ技術職員の主任っぽい人がなぜかテレビ版の時とは違いメタボリックっぽかった(電話で受け答えする人)。やはり時代の流行をちょこちょこ採り入れているのか?

 「現時刻を以て初号機パイロットを凍結」の碇司令のセリフがいきなり出てきた。早い早い。碇司令の名台詞、ちょっと早く出し過ぎじゃないですか?それとも破以降は、旧エヴァの名台詞は使われなくなるから早く出しちゃったって事でしょうか。さっそく痺れさせてくれるセリフが出てきてプチ感動。その後ミサトが司令の指示に対して反駁するのだけれど、画面に「待ってください」とミサトが現れるときに、碇司令が「ん?」と声を出します(出してたように聞こえました)。どことなくアドリブっぽいこのセリフ。旧エヴァでは、この碇司令の反応はちょっと有り得ないです。今回の碇司令は、ちょっと人間味があります。

ヤシマ作戦開始直前の際に「碇、いや、シンジと呼ばせてくれ」とトウジの手紙が読み上げられる。なんかジ〜ンと来る。


ラミエルの変形っぷりに、ネット上では感嘆の声続出

 ラミエルは一度初号機の放ったビームが命中して倒されたのかと思ったら、いきなり甦った。ビームを打つときは、もう予想の付かない形状に変形するし、倒されたときに、まるで寒気でも起こしたかのようにトゲトゲになる。このラミエルの変形っぷりは、インターネット上のファンの間では凄い人気。筆者的には、ラミエルの使徒の形状や、ラミエルが最後に倒されるときの突き出た氷のような姿や、使徒確認の画面など余りにも装飾を色々付け足しすぎて、やりすぎなんじゃないかとも感じられた。旧劇場版も、テレビ版と比べてやり過ぎなんじゃないかと感じたけど、新劇場版はその上をいくやり過ぎ感がなくもない。どうもバランスが崩れてしまいそうな危機感と隣り合わせな感じがして、大丈夫なんだろうかとハラハラドキドキしながら観てしまう。でもこれは、旧エヴァに慣れ親しんでいるからこその感情であって、何度も見返していく内に、新ヱヴァ流に馴れていくんだろうか。旧エヴァのデザインのままじゃ物足りないのもあるだろうし。とりあえずDVD化されたらじっくりと見てみたい。

 ラミエルを倒した後にシンジがエントリープラグに駆けつけた時に見せるレイの笑顔は旧劇場版のものではなく、まったく新しくなっている。旧劇場版の笑顔はちょっと濃い感じだけど、今回はあっさりしていながら、後々まで余韻を残すような笑顔。これもまた巧くバランスが取れている。シンジはちょっと泣きすぎ。

 冬月の詰め将棋シーンがもう登場してビックリした。

 碇司令と冬月のセリフから、シンジとレイが接近することも、シナリオの中で決められていることらしい。 vol.3につづく。(2007.09.19.22:53)

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Shiro SAGISU Music from EVANGELION:1.0 YOU ARE(NOT)ALONE
新劇場版ヱヴァンゲリヲンのテーマ曲は、旧版と同じく鷺巣詩郎が担当している。第6使徒ラミエルとの戦闘シーンでは、コーラスを伴う神懸かり的なクラシック風音楽が流れる。

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