第四話 雨、逃げだした後

シンジの反抗期とヤマアラシのジレンマ

 今回のシンジ君、ちょっとだけ反抗期です。皮肉を込めて「乗りますよ、どうせ僕しか乗れないんでしょ?」と逆にミサトさんに弱みを突いてきます。おおいいぞいいぞシンジ君、もっとミサトを困らせてやれ(笑)。

 シンジは父親と離れて暮らして、自分をいらない人間と思いこんでいる難しい年頃の少年として描かれているのですが、「アイツ、友達いないんじゃないかしら」とか「シンジ君は友達を作るのが不向きなのかも知れないわね」等のセリフや、それに続くヤマアラシのジレンマの挿話など、アニメファンはどちらかというと内向的な人が多いので、これらのセリフを聞いて、自分と同じだなぁとか、これはやっぱり自分たちのアニメなのかなぁとか思った人多いのかなぁとも思いました。結構キツいセリフだけど、聞いたあと何だか癒されます。

 シンジの家出を知ったミサトさんが顔を真っ赤にして「シンジのバカぁあ!!」と叫びますが、その後で弱々しく、ばか、と呟くシーンで、やっぱりミサトさんはシンジがいないと淋しいのか?と変な期待をしてしまいました。なんか恋人に逃げられた人みたいなシーンだよなぁ。

 ミサトさんの反応を見るに、シンジはミサトにとって、父の復讐を果たす道具の他に、どういう関係を望んでいたんだろうなぁと考えさせられます。親子の関係なのか、姉と弟という関係なのか、孤独や淋しさを癒し合う関係なのか。後にアスカに家族ごっこと揶揄されるけれど、本意は何だったんだろうなぁ。未だ謎です。


アニメではありえないくらい長い沈黙のシーンが印象的

 ただただひたすらに二人が見つめ合う長い沈黙のシーンが最後にあります。この手法も、アニメでは初の試みではないでしょうか? ゴダールの映画「気狂いピエロ」でも二人が炎上している自動車をよそに、遠くに向かってただひたすらに歩く長いシーンがあったけれど、長い沈黙は、映像に日常性を生じさせます。この日常性を巧く表現できているところが、他のアニメとは違うエヴァの特異性でもありますね。ミサトの元に帰るシンジと、シンジが戻ってきてくれて喜ぶミサト、沈黙が何かしら語っています。

 この沈黙の技法は後に、アスカとレイがエレベーターに乗り合わせるシーンでも効果的に使用されます。コミュニケーションが主題の一つともなっているエヴァならではの演出です。

 もう一つの見所は、主人公の家出シーンです。シンジ君が彷徨っている箱根郊外の風景もまたどこかモデルになってるところがあるのでしょうか。全てを投げ出して一人で知らない街を彷徨する不安や孤独、恐怖心を見事に表したシーンです。 しかし、くっらいアニメだなぁ。この回だけ特に暗いんです。

 あと、シンジが時間をやり過ごしてた映画館の外の看板に「ドキュメント・セカンドインパクト」とあるので、葛城調査隊の南極での事故を描いているシーンなのでしょうが、どことなくナディアの最終回のシーンと重なって聞こえたりしました。

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出演:緒方恵美、三石琴乃、林原めぐみ、宮村優子
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形式:Color, Dolby
言語:日本語
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販売元:キングレコード
発売日:2003/7/24
時間:100 分

シンジの保護者を努める葛城ミサト

第四話の最後でミサトは「お帰りなさい」と、再びシンジを迎え入れる。声色からも、嬉しさに溢れているのが分かるこのシーンは、第弐話でミサトがシンジを自分のマンションに迎え入れるシーンと同じセリフだが、意味合いが若干異なり、一つの試練を乗り越えて、二人の距離がより近くなったことが感じ取れるようでもある。その後、劇場版でも、レイがリリスと融合する時、レイが「ただいま」と言うと、「お帰りなさい」が文字のみで出てくる。エヴァではセリフやシーンが意図的に繰り返されている。


第四話のラストに出てくるネルフ諜報部員の1人が、2006年に発売されたゲーム「シークレット・オブ・エヴァンゲリオン」の主人公、剣崎キョウヤに似ている。第一次頂上会戦で大怪我を負ったと略歴にあるので、可能性は低いが、10年以上後になって、脇役に出ていた1人がゲームの主人公になるのは、大ヒット刑事ドラマ「踊る大捜査線」のスピンオフにも似ていて興味深い。

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『エヴァとの思い出』

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